西洋美術史講座(東京)第62回2021年10月24日
“いま”と“ここ”を描く、19世紀の革命家ギュスターヴ・クールベ」
レアリスム美術、19世紀フランス絵画
講師:佐藤よりこ(F6)
ギュスターヴ クールベ(1829〜1877)
19世紀、激動のフランス絵画史にひときわ巨大に聳えるのがギュスターヴ・クールベである。
クールベを知らずして、近代絵画は理解することは出来ないと考えられている。
当時はアカデミーが確固たる地位を占めていた時代であったが、クールベは自らの時代にこだわり、自己の体験に基づいた「いま」と「ここ」を描くことに固執した。
自然のみを師としたと主張したクールベだが、彼の画風は過去の古典的巨匠の研究の上に成り立っている。
そしてカラバッジョの本質的な要素を受け継いだ画家でもある。
クールベの「オルナンのある埋葬の歴史画」は、革命的な作品である。
アカデミーは、クールベが一農民の埋葬を王侯のみに許された大画面の歴史画として描いたことに怒りを示した。
さらにはクールベが、アカデミーが主催するサロンに対抗して、パリ万博美術会場の目の前に独自の表現の場である個展を開いたことに仰天したのである。
クールベの人生は(目まぐるしく変化する)政治が絡んだ複雑な人生であった。