西洋美術史講座(東京)第66回 2022年10月23日(日)
「デッサンの達人エドガー・ドガの魅力:線と構図と時間概念」
19世紀フランス絵画
講師:佐藤よりこ氏(F6)
エドガー・ドガ(1834-1917)は1855年エコール・デ・ボザールに入学、新古典主義の総帥アングル
から「線を引きなさい若者よ、生命と記憶から紬出される線を、さすれば君は素晴ら
しい画家になれる。」の言葉を心に刻んだと言われている。
正当な美術教育を受け、ナポリの祖父を訪ねてはルネッサンス美術の研鑽を重ね歴史
画に取り組んでいたドガだが、1860年頃には依然として新古典主義に則ったサロンの
風潮には我慢ならなくなっていた。
それゆえ、マネを中心とする新しい芸術を標榜するグループとの交流が深まり、1874
年第1回印象派展から参加し、第8回展まで計7回参加している。
しかし、モネたちの外光派とは異なり、ドガはデッサンを重ね周到な画面構成を行い
アトリエで制作し、人工の光の中に色彩を見出すなど、他の印象派の画家とは一線を
画していた。
作品のほとんどは人物像であり、何気ないポーズや動きにモデルの個性を見出すデッ
サンの達人であった。
また、日本美術や写真術から、前景のクローズアップ、極端な遠近感、時間概念など
インスピレーションを受け、伝統的な西洋美術とは異なる独特の視点を生み出してい
る。
晩年には目の病もあり、発色の良さと線の美しさを同時に得ることのできるパステル
とモノタイプ版画を併用し、彫刻作品も制作している。
後継者にはメアリー・カサットとドガの作品に生涯魅了されたトゥールズ=ロート
レックがいる。