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西洋美術史講座(東京)第72回最終回 2024年7月28日(日)

「清らかな詩情と構築性、唯一無比のジョルジュ・スーラの点描」
19世紀フランス絵画

ジョルジュ・スーラ(1859~1891年) 1859年12月2日パリの裕福な家庭に生まれる。叔母の影響を受け7歳から絵を描き始め、10代前半は彫刻デッサン学校で学ぶ、78年にエコール・デ・ボザールに入学する。翌年兵役につき退役後はボザールを退学している。その後モノクロームによる素描の修練に励み、83年に初めてサロンに出品した素描肖像画は19世紀最高の素描肖像画の1点と評価されている。ミシャレット紙にコンテ・クレヨンで描かれた陰影表現は内側から光が生まれているかのようで、この技法が点描法発明に閃きをもたらしたと思われる。 1882年頃から色彩を用いた大画面の作品に取りかかる。色彩と光学理論に関する書物を読み研究している。色彩を分離して並置する技法はティツィアーノ、ヴェラスケス、ドラクロアなどの作品に存在しているが、科学的理論を応用し絵画制作を行ったのはスーラの点描法からである。31歳で夭折したため、大画面の作品は6点だが、完成に至るまでには膨大なスケッチやクロクトン(パネルに描かれた油彩の小作品習作)が存在している。 「アニエールの水浴」、構図と色彩の総合的な調和がもたらす静けさがあり、小作品の静物画、風景画でもすでに部分的に点描が見られる。「ラ・グランド・ジャッド島の日曜日の午後」、最大限の光輝性を獲得したスーラ最大の傑作で、19世紀末絵画のアイコンとなった作品。「ポーズをする女たち」、点描の冷淡な技法では表現できないと言われた古典的主題「裸体」に挑戦した作品である。「サーカスの客寄せ」、初めて夜の娯楽を描いた作品で、幽玄で半透明な光の描写が特徴的である。「シャユ踊り」、色彩の「情緒的喚起力」を重視し、線の動きを試している。「サーカス」、未完成作品。同じ大きさの点が密度を違えることにより、奥行き、遠近感や人物の陰影をも表現している。また物の運動性と躍動感の表現に挑戦している。 新印象主義者第2段階の時代、スーラの死後ポール・シニャックは代表者となり、その理論をヨーロッパ中に広め貢献した。カミーユ・ピサロはスーラの存在に胸を躍らせたが点描の限界を感じて印象派にもどっている。アンリ=エドモンド・クロスはスーラ晩年の様式を発展させ、シニャックとともに20世紀初頭のフォーヴィスム等の抽象絵画に大きな影響を与えている。
ジョルジュ・スーラ、花瓶の花、1879〜81年、カンヴァス、油彩、46,3×38,5cm、マサチューセッツ州ケンブリッジ、ハーバード大学、フォッグ美術館
ジョルジュ・スーラ、アマン=ジャンの肖像、1882年、ミシャレット紙、コンテ・クレヨン、62×54cm、ニューヨーク、メトロポリタン美術館
ジョルジュ・スーラ、アニエールの水浴、1884年、カンヴァス、油彩、200×300cm、ロンドン、ナショナル・ギャラリー
ジョルジュ・スーラ、繋がれた馬、1884年、カンヴァス、油彩、32,4×40,9cm、ニューヨーク、グッゲンハイム美術館
ジョルジュ・スーラ、グランド・ジャット島の日曜日の午後、1886年、カンヴァス、油彩、207,6×308cm、シカゴ、シカゴ美術館(アート・インスティチュート)
ジョルジュ・スーラ、グランキャンのオック岬、1885年、カンヴァス、油彩、66×82,5cm、ロンドン、テート・ギャラリー
ジョルジュ・スーラ、ポーズする女たち、1887年、カンヴァス、油彩、200×249,9cm、アメリカ、フィラデルフィア、バーンズ・コレクション
ジョルジュ・スーラ、サーカスの客寄せ、1887〜88年、カンヴァス、油彩、99,1×149,9cm、ニューヨーク、メトロポリタン美術館
ジョルジュ・スーラ、シャユ踊り=フレンチ・カンカン(仏Le Chahut、英The Can-can) 、1889〜90年、カンヴァス、油彩、171,5×140,5cm、オランダ、オッテルロー、クレラー=ミュラー美術館
ジョルジュ・スーラ、サーカス、1890〜91年、カンヴァス、油彩、186,2×151cm、パリ、オルセー美術館

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