今年4月に発足した「こども家庭庁」1は子どもがまんなかの社会を実現するために子どもの視点に立って意見を聴き、子どもにとっていちばんの利益を考え、子どもと家庭の、福祉や健康の向上を支援し、子どもの権利を守るための子ども政策に強力なリーダーシップをもって取り組むことを宣言している。その基本となる「こども基本法」では、子どもの視点、子育て当事者の視点に立つことや全ての子どもの健やかな成長、Well-beingの向上、誰一人取り残さず、抜け落ちることのない当事者として持続可能な社会の実現に参画できるよう支援を行うことを目指している。本学において保育者養成に携わっている筆者であるが、保育実践において、「子どもの権利条約(児童の権利に関する条約)」2の4つの原則を常に忘れないで欲しいと学生に伝えている。生命の保持はもちろんのこと、子どもの最善の利益については、「その子どもにとって最もよいことは何か」を第一に考え、子どもの成長に応じて、子ども自身が意見を表明し参加できるようにすることや、すべての子どもが子ども自身や親の人種や国籍、性、意見、障がい、経済状態などどんな理由でも差別をされないことである。
今後、子どもの数は減少していくと思われるが、子育ては社会全体で行う時代となっていくであろう。未来を支える子どもたちを社会全体で大切に育てることが必要となってくるのである。また、子どもと関わる大人もこれからは、子ども自身が考え、選択し、実行していくことができるようにするために、子どもを取り巻く環境を整え、多様な子どもの姿を受け止め、子どもの成長をサポートしていきたいものである。そのためには人生の基盤作りを言われている幼児期に子どもと関わる保育者の役割は大きい。様々な子どもの姿から、「なぜこの子はこの行動を取ったのだろう。」と結果ではなくその理由を考えることのできる保育者となってもらいたいと願っている。
[1] こども家庭庁 https://www.cfa.go.jp/
[2] 子どもの権利条約 日本ユニセフ協会抄訳