6月10日に本学で行われた、カトリック大学・短期大学連盟総会で、神戸海星女子学院大学周辺を舞台にした文学について、お話ししました。
今回ご紹介した作家は、宮本輝・今東光・横光利一・妹尾河童・大岡昇平・堀辰雄・田辺聖子・谷崎潤一郎・泉鏡花・横溝正史など17名です。何れも、青谷や王子、摩耶山を文学作品の舞台として描き込んでいます。
写真は、神戸海星女子学院大学の屋上から撮った虹の写真です。このような美しい虹の風景を短篇小説に描き込んだ作家がいます。神戸生まれの横溝正史です。ミステリー作家として有名な横溝正史ですが、神戸を舞台とした初期作品では、ロマンチックでお洒落な短篇もいくつか発表しています。「虹のある風景」(「近代小説」1929年6月)に登場するマリーという少女もロマンチックでお洒落です。神戸で華族の御姫様になる夢を見ようとしたマリーは、神戸で恋をして、雨上りに忘れられない風景に出会います。
「摩耶山のてっぺんから神戸の港へかけて、大きな虹がかかっていたの、そりゃ美しい虹だったわ」
現実と夢を行き来するマリーの物語を、作者は、次の言葉で結びます。
「六月の神戸の街はお伽噺である」
六月の神戸は、今も私たちに、自分だけのお伽噺を紡がせてくれるかもしれません。少し、街に出てみませんか? (文責:箕野聡子)