【教員コラムvol.4】 「AI時代のコミュニケーション能力」 (英語観光学科 佐伯瑠璃子 専任講師)

 最近、社会で求められる重要な能力として「コミュニケーション能力」が挙げられているのを頻繁に耳にします。社会で一般的に求められるコミュニケーション能力とは、正しく伝え、正しく受け取り双方向のコミュニケーションを成功させ、人間関係や信頼関係を正しく構築する力です。一方で私たちのコミュニケーションの場はSNSや最近では対話型AIなど多様になっています。対話型AIとでは人のようなスムーズな会話が難しいというイメージが強いかもしれません。しかし、今年ベルギーでは男性が対話型AIアプリ内のキャラクターとチャットで6ヶ月やり取りをし、自らの命を断つ決断に至るという事案が発生しました。残された会話はあまりにもスムーズで男性にとっては人間との会話と錯覚するほどだったのでしょう。

 コミュニケーションは人と人の対話である前提に立ち返ると、人間ではない対話型AIとの会話を「コミュニケーション」と捉えることには議論が必要です。人と人の会話で優先されるのは口から出る言語情報よりも非言語情報が多くを占め、非言語表現が乏しい対話型AIと人との会話は人間のそれとは本来大きく違います。しかし、SNSに慣れている私たちは文字情報に本来では表情や声などから得るはずの情報を想像し付け加えているのではないかと私は考えています。そうすると会話の相手が非言語表現や会話の背景を読み取らない対話型AIであっても私たちはそれを擬人化し、会話の背景を読まないこその客観的な回答に説得力を感じ影響を受けるかもしれません。

 時代が進むにつれ私たちのコミュニケーションのかたちとそれに応じた能力も変化していきます。しかしAI時代においても私たち人が構築する社会では人とのやり取りは避けられません。ひとりスマホで完結できることが多い生活の中でさらに社会で強く求められるコミュニケーション能力を身につけるには、スマホを含めた日々のコミュニケーションを振り返り、改めてコミュニケーションは人と人の相互行為であることを再認識し、人と顔を見て話す機会を大切にしていくという基本的なことが最も必要なのではないでしょうか。