【教員コラムvol.8】 「お花見とインバウンド」 (英語観光学科 酒井新一郎 教授)

 ようやく寒さも和らぎ春の訪れを感じる陽気になってきましたが、神戸の桜開花予測(日本気象協会)は3月25日のようです。コロナの感染も緩和され、お花見も多くの人で賑いを取り戻しそうですが、お花見の始まりは平安時代の貴族が桜を見ながら歌を詠み、蹴鞠などをした行事が始まりです。さらに農民たちが豊作を祈願し桜の下で宴会をするようになりました。亨保年間に八代将軍吉宗が飛鳥山や墨田川堤、小金井堤などに数千本の桜を植えて庶民のお花見を推奨し、現在の桜の下でお弁当を食べながらお花見を楽しむようになりました。

またお花見にはお弁当も楽しみの一つですが、江戸時代後期に刊行された醍醐山人の料理本「料理早指南」に、お弁当の献立が記載されています。「上の部・中の部・下の部」と3段階にランク付けされ、彩も美しい春の旬の食材を使った料理が紹介されています。当時の人気料理は卵焼きや蒲鉾だったそうです。[i]

 この春は観光各地で国内外から多くの旅行者で賑わうのではないでしょうか。コロナ禍で減少していた訪日外国人旅行者数は2023年計で2,500万人を超え、今年1月では約269万人とコロナ前とほぼ同数に回復しています。特に韓国、台湾、豪州などからの旅行客が多く、中国からの旅行者はコロナ前の半数程度です。[ii] 訪日外国人旅行者にとっても春の桜シーズンと秋の紅葉シーズンは人気の旅行シーズンです。

また京都など人気の観光地ではオーバーツーリズム対策も必要です。これからの観光は観光地を消費するのではなく、地域住民との共生が必要です。持続可能な観光(サステナブルツーリズム)を旅行者、観光事業者、地域住民が共に良い「三方よし」の環境作りを行うことは、これから世界から選ばれる観光地の条件になります。観光による地域の活性化を行うことで、地域住民が自分たちの街が観光地としてブランド化することで、シビックプライドの醸成に繋がる仕組みづくりを考えていくことが重要です。これは私の研究テーマでもあります。

まもなく桜の開花と共に春がやってきます。本学近隣の王子公園では素晴らしい桜を楽しむことができますので是非花見弁当を持ってお花見にお越しください。


[出典]

[i] 農林水産省「お花見と花見弁当」

[ii] 日本政府観光庁(JNTO)「訪日外客数(2024年1月推計値)」