【教員コラムvol.9】 「私の研究報告」 (心理こども学科 中植満美子 教授)

 教員がどんな研究活動をしているか、というのを書いてほしいとのことだったので、2024年の4月のコラムでは、本学で主に心理学の授業を担当している教員としての、最近の研究活動について紹介する。

 まず、学内では、3年次のゼミ生といっしょに共同研究を実施しており、直近では、「ほめることについての心理学的考察」という研究を大学祭、PC学科☆フェスティバルで発表することとなった。自分自身でよい、と自分を認めることができるためには、まず、自分以外の誰かに肯定される体験が必要となる。日本では、以心伝心といった、言わなくてもわかるでしょ、察してよという文化があるために、親子であっても、子どもにあまりポジティブなフィードバックを行わない傾向がある。そのため、国際的に比較しても、日本の子ども達は低い自己肯定感、自尊感情を持つ子どもが多いという調査結果もある。そこで、2023年はゼミ生と共に、「褒めること」に関する調査を行い、分析した。

その結果、単なる「褒め」ではなく、それにより本人の変化・成長に繋がるような伝え方の必要性が示された。また、現代の女子大学生は、日常的に「褒めること」をコミュニケーションの中で実践しているようであった。しかしながらその内容は「外見」や「能力」といった外側からわかる内容が多く、関係性が以前よりも表面的になってきているのではないかと考えられた。また、褒めることへの抵抗感がない群の回答者の方が全般的に自己肯定意識尺度得点や対人信頼感が高く、心が安定しており、他者のことを素直にほめることができることがわかった。これらのことより、「褒められること」以上に、日常的に誰かを褒める体験をこれまで以上に実践することを推奨するのが、幼少期から求められるのでは、という結論となった。

 また、課外活動の一環として、私の研究テーマの一つである描画を用いた心理支援の経験を活かし、創作部の皆さんと一緒に、アートセラピーボランティア「絵の会」として、六甲病院で入院患者さんとそのご家族のために活動している。言葉にできない様々な思いが、非言語のコミュニケーションの中で表現されることもあり、患者さんとご家族にとって、作品は、大変貴重な思い出の品となっている。

 そして私個人の活動としては、児童養護施設における被虐待児への心理支援を研究テーマとしており、2002年より様々な形での集団療法実践を試行錯誤の中行ってきた。現在は、メンタライゼーションを促進するグループワークの開発に取り組んでおり、自己理解・他者理解、そして、他者の心を思う力をどのようにして育てるかが、新たな研究テーマの一つとなっている。子ども達が、自分でよい、そして、周囲の人たちのことも認め、ともに成長しあえるような治療的共同体の形成を目指している。

 こうした研究活動を学生と授業等を通じ積極的に共有するよう努力している。対人支援職を目指す学生たちにとって今後の支援・研究活動のヒントとなれば幸いである。