研究の一環として、アジアの幼児教育について学ぶため、2023年9月に台湾の台北市とその近郊にある児教育施設(幼児園や小学校)や養成校(教職課程のある大学や専門学校)の視察に行ってきました1。
幼児教育について、日本においては2006年に「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律」が施行され、「認定こども園」の制度が始まりました。そして、今回視察に行った台湾では、2012年に「幼児教育及びケア法」が施行され、幼稚園と託児所が一元化(名称は「幼児園」と統一)されました。台湾ではこれに伴い、私立幼稚園での教科学習指導に偏った教育から、遊びを重視し、子どもの主体性を尊重した学びを推進する取り組みが活発となっています。中でも、教育機関が一貫した教育方針に基づきながら教育プログラムのデジタル化を進めているようです。こうした、ICTの活用によって、国内の幼児教育機関へ統一したカリキュラムや教材がデジタル形式で提供され、国内の教育内容の標準化と質の確保の推進が期待されています。そのため、台湾は、保育・教育分野におけるICT活用において先進的と言われるようになっています。
今回、台湾の大学や小学校、幼児園等の教育機関を訪問する中で、視察したある幼児園では、プログラミング教育ロボット「KIBO」を使用した体験的な学びの時間がありました。(写真1・2) 教師と子どもたちは、「KIBO」を動かす目的や必要な動作を確認しながら活動していました。
(写真1) (写真2)
ロボット以外にも子どもたちの発達に合わせてICTを活用した教材(写真3・4)を多数準備・活用している説明も教師からありました。例えば、タブレットを用いた絵本の読み聞かせ、デジタル絵本作成アプリを使った創作活動、学習ゲーム等、これらの教材は子どもたちの創造力や問題解決能力を高める効果があるとのことでした。台湾の教育現場では、幼児期からデジタルデバイスの使用が一般的であり、教育現場でも積極的にICTが取り入れられています。
日本においても、ICTを活用した教育は小学校以上の教育機関を中心に導入されてきて来ていますが、これからは幼児教育にもICTの活用が教師の業務や情報共有のサポートとしてではなく、子どもたちへの教育教材としてどのように導入・活用していくのかという点で動向を探っていきたいと思います。
(写真2-1)
※ この研究は、「保育者養成におけるブレンディッドラーニング2を用いた保護者との関係構築力の育成」[1]の一環であり、保育者養成におけるeラーニングによる個別の事前・事後学習と授業におけるアクティブラーニングを組み合わせたブレンディッドラーニングのプログラムを開発することを目指して台湾での視察が行われ、そこに同行しました。
※ このコラムの内容は、第11回神戸常盤学術フォーラム(2023.12.25)にて報告した内容です。